・所得控除について
・税額控除について
・控除を使った節税方法
支払う税金のなかでも、馴染みのあって負担額が大きい所得税。
できることなら、税額を低く抑えたいという方々がほとんどだと思います。
そこで、みんなが言葉だけは知っている『控除』!!
ただ、控除を知るには、所得税の計算方法の流れを知っていなければ理解できません。
そこで今回は、所得税の計算方法の基本的な流れから、控除とは一体どういったものかをわかりやすく解説していきます!
この控除を上手く使いこなすことによって、所得税を抑えることが可能ですので、最後まで必見です!
目次
『控除』を理解するため!?所得税を計算するまでの流れ!
こちらは、所得税の計算方法で、最も大事な軸になる考え方です。
順を追って簡単に説明します。
①収入から所得にします!
収入税とは言わず所得税と言いますよね?
この収入から経費を引いたものが所得になるのです。
基本的にはこの所得に税金がかかります!
②所得から課税所得にします!
所得に税金がかかるとは言うものの、全く同じ仕事をしている人が何人かいたとします。
家族を養ってるとか、保険をかけているとか、医療費を多く使ったなど、人それぞれ諸事情があって、お金の余裕が違ってきますよね?
そういった諸事情を差し引ける仕組みを所得控除といって、所得から所得控除を差し引いて課税所得を求めます。
③課税所得に税率を掛けて所得税を計算する!
この課税所得に法律で決められた税率を掛けて税額を計算します。
④所得税から税額控除があれば差し引く!
③で計算した結果が所得税なんですが、さらに差し引ける税額控除というものがあります。
これも、諸事情の一つなんですが税額から直接差し引くことができるので節税効果が大きいとされています。
『控除』は税金を計算する際の過程である!
②の所得控除と④の税額控除で2回『控除』という言葉が出てきましたね。どちらも諸事情を考慮した控除なんですが、②と④の控除は税金への影響がかなり違ってきます。
そして何より、『控除』は税金を計算する過程の一つだということを頭に入れておいて下さい。
収入→所得→課税所得→税額という所得税の計算の流れの一部です。
余談ですが、この所得税の計算の流れが分かっていない方が確定申告の相談に来られた時に、医療費控除を受けたいと言って、医療費の金額しか持参していませんでしたww
あくまで、控除が計算の過程のうちの一つと分かっているなら、収入が分かるものや経費が分かるもの、サラリーマンの場合であれば源泉徴収票などを持ってくるのは必然ですね😉
控除を増やしたりする場合には原則、税金の計算を目的とする確定申告をする必要があります。
今回は、この②と④の『控除』について詳しく見ていきたいと思います。
ちなみに所得税の計算方法に関して、もっと詳しい内容は次の記事をご覧ください。
☆個人事業主の方☆
☆会社員の方☆
『控除』とは!?
そもそも「控除」とは差し引くという意味です。
税金の世界でも「控除」は差し引くという意味で、個々の諸事情に合わせて税金の負担を軽くするための仕組みです。
控除には2種類あります!
1つは、『所得』から差し引く『所得控除』
もう一つは、計算し終わった『税額』から差し引く『税額控除』の2種類です。
それでは順番に解説していきます!
所得控除
所得税を計算する過程で、税率を掛ける前の金額(所得金額)から差し引きます。
この所得控除が増えれば、もちろん税金が安くなりますが、所得控除の金額がそのまま税金が安くなりません。
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【具体例】
税率10%の会社員の方が、医療費控除で確定申告しました。(医療費控除対象金額は20万円)
この場合、どれほど税金が安くなると思いますか?
きっちりした金額は最後まで計算してみないと分かりませんが、概算ならすぐにできます。
20万円全額安くなるのではなく、20万円にその人の税率10%をかけた約2万円が安くなります。
また、『所得控除』は全部で14種類。先ほど控除を増やしたりするには、確定申告が必要と言いましたが、会社員の場合、年末調整の際に会社に申請するだけでOKなものもあります。(詳細は後述します)
税額控除
税額控除とは、その名の通り税額から直接差し引くことができる控除です。
先ほど解説した所得控除と混同しがちになるので注意が必要です。
この図を見れば、一目瞭然ですが、税額控除は計算し終わった所得税から直接差し引きます。
所得控除は、その金額に税率をかけた金額が税金から引かれるのに対して、税額控除は全額引けます。
【具体例】
新築を購入したサラリーマンが住宅ローン控除(対象金額は20万円)を受けるために確定申告をしました。
この場合、住宅ローン控除は税額控除になりますので、20万円全額が税金から差し引けます。
今回、あえて所得控除の具体例と同じ金額の20万円にしましたが、税額控除の方が、大いに節税できることがわかります。
所得控除の種類!!
ここからは所得控除の種類を一挙に解説していきます。
普通に紹介しても記憶に残らないと思いますので、ランキング形式で説明していきます。
第1位 医療費控除
控除額➡最高200万円!!
医療費控除は自分自身や、自分の家族のために、一定金額以上医療費を支払ったときに受けられる所得控除です。
確定申告相談会場で一番多い相談がこの医療費控除です。
対象となる医療費はこちらになります。
保険相談ナビより
基本的に、治療にかかるものであれば大丈夫です。
上記以外の医療費控除の対象になるかどうかは以下を参照して下さい。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2019/pdf/008.pdf
また、医療費が10万円以上でない場合や、医療費控除の注意するべきポイント、申請方法などをもっと知りたいという方は、こちらの記事をご覧ください。
第2位 寄付金控除
控除額➡寄付金の合計額or総所得金額の40%から2,000円引いた金額!
医療費控除についで、相談がとても多い控除です。
寄付金控除?と言われても寄付金なんかしたことないし関係ないと思っていませんか?
寄付金控除とは、国や地方公共団体などに対して、寄付金を支払った場合に、その年の所得控除を受けられる制度です。
例えば地方公共団体に納める「ふるさと納税」や認定NPOやNGOに寄付した場合などが寄付金控除の対象となります。
サラリーマンの最大の節税とも言われていますので、利用したい制度です♪
ただ、この寄付金控除(主にふるさと納税)ですが、限度額なども決められていますし、ふるさと納税の返礼品も星の数ほどあります。
そこで、ふるさと納税について徹底解説しましたので是非参考にしてみてください👍
第3位 扶養控除
控除額➡38~63万円!
養う家族がいる場合に受けることができる所得控除になります。
ただ、誰でも扶養控除にできるわけではなく要件があります。
控除額一覧
国税庁ホームページより
※1 「控除対象扶養親族」とは、扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が16歳以上の人をいいます。
※2 特定扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の人をいいます。
※3 老人扶養親族とは、控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の人をいいます。
※4 同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者又はその配偶者の直系の尊属(父母・祖父母など)で、納税者又はその配偶者と普段同居している人をいいます。
※5 同居老親等の「同居」については、病気の治療のため入院していることにより納税者等と別居している場合は、その期間が結果として1年以上といった長期にわたるような場合であっても、同居に該当するものとして取り扱って差し支えありません。ただし、老人ホーム等へ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、同居しているとはいえません。
(注)この扶養は所得税法上の扶養です。
勘違いしがちなのが社会保険の扶養と思っている方が多いので、注意して下さい。
扶養控除でどれぐらい税金が安くなるか知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください👌
また、配偶者は扶養控除ではなく、次に紹介する配偶者控除になります。
第4位 配偶者控除
控除額➡38~48万円! *年末時点で配偶者が70歳以上の人は48万円となります。
配偶者の所得が一定水準以下であれば受けれる控除になります。
配偶者の要件
・民法の規定による配偶者(婚姻届を出していない内縁の妻などはNG)
・納税者と生計を一にしている
・年間の合計所得金額が38万円以下(給与のみの場合は103万円以下)
・家族の自営業で従業員として働いていない(専従者控除を受けていない)
第5位 配偶者特別控除
控除額➡38~1万円!
配偶者特別控除は、配偶者に38万円~76万円の所得がある場合に受けられる所得控除になります。
ちなみに、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下であることも条件となります。(給料のみの方だと年収1220万円を超えると配偶者控除も配偶者特別控除も受けられません。)
控除額は控除対象となる配偶者の所得に応じて、38万円から1万円の間で調整されます。
国税庁ホームページより
第6位 社会保険料控除
控除額➡支払った社会保険料全額!
自分や家族のために社会保険料を支払った際に受けられる所得控除です。
実際に支払った金額の全額が控除の対象になり、会社員の場合は給与から差し引かれた社会保険料の金額となります。
対象となる主な社会保険料は以下の通りです。
・国民健康保険
・厚生年金保険
・後期高齢者医療保険
・国民年金基金
・建設国保
・国民年金
・介護保険料
・労働保険料
第7位 小規模企業共済等掛金控除
控除額➡支払った掛金の全額!
納税者が小規模企業共済の掛金を支払った場合、支払った金額の全額が所得控除として控除されます。
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、政府が推奨しているiDeCoもこの控除にあたります。
iDeCoは将来の資産形成だけでなく、節税効果もある優れものです。
第8位 障碍者控除
控除額➡最高75万円!
自分や家族が障害者で場合、最高75万円の所得控除が受けられます。
扶養控除では、16歳未満はダメでしたが、障碍者控除は16歳未満でも適用されます。
控除額は3つに区分されており、それぞれの控除額は以下の通りです。
控除の対象となるのは以下の通りです。
(1) 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人
→特別障害者になります。
(2) 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により、知的障害者と判定された人
このうち重度の知的障害者と判定された人は、特別障害者になります。
(3) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人
このうち障害等級が1級と記載されている人は、特別障害者になります。
(4) 身体障害者福祉法の規定により交付を受けた身体障害者手帳に、身体上の障害がある人として記載されている人
このうち障害の程度が1級又は2級と記載されている人は、特別障害者になります。
(5) 精神又は身体に障害のある年齢が満65歳以上の人で、その障害の程度が(1)、(2)又は(4)に掲げる人に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人
このうち特別障害者に準ずるものとして市町村長、特別区区長や福祉事務所長の認定を受けている人は特別障害者になります。
(6) 戦傷病者特別援護法の規定により戦傷病者手帳の交付を受けている人
このうち障害の程度が恩給法に定める特別項症から第3項症までの人は、特別障害者となります。
(7) 原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律の規定により厚生労働大臣の認定を受けている人
→特別障害者となります。
(8) その年の12月31日の現況で引き続き6ヶ月以上にわたって身体の障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする(介護を受けなければ自ら排便等をすることができない程度の状態にあると認められる)人
→特別障害者となります。
第9位 生命保険料控除
控除額➡最高12万円!
一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。
各それぞれの限度額が4万円で合計12万円が控除の最高額になります。
以下の表が計算式になります。
この表から見て分かるように、年間8万円以上保険料支払っても最高4万円にしかなりませんので、保険料を見直す参考にしてみて下さい♪
なお、保険の見直しはこちらからであれば無料でファイナンシャルプランナーに相談できますので、一度相談してみてもいいかもしれません。
第10位 地震保険料控除
控除額➡最高5万円!
地震などの損害部分の保険料や掛金を支払った場合に受けられる所得控除です。
火災保険は対象外ですのでご注意下さい。
第11位 勤労学生控除
控除額➡27万円
アルバイトなどの仕事をしている学生の場合に、受けられる所得控除です。
勤労学生の条件は以下の通りです。
・勤労による所得があること
・合計所得金額が65万円以下(給与所得のみの場合、収入金額が130万円以下)
・特定の学校の学生、生徒であること(学校から証明書が発行されますので、学校に問い合わせて下さい)
第12位 寡婦(夫)控除
控除額➡寡婦27~35万円・寡夫27万円!
寡婦控除及び寡夫控除は、納税者自身が寡婦or寡夫である場合に受けられる控除です。
ちなみに、婚姻届を提出した夫婦じゃないと対象になりませんでした。
ただ、2020年の税制改正で、未婚であっても要件さえ満たせれば寡婦控除が受けられることになりました。
寡婦控除の対象は、①・②のいずれかです。
控除額は27万円ですが、①・②の両方に該当する場合は35万円となります。(特定の寡婦といいます)
①夫と死別もしくは離婚した後に再婚しておらず、扶養親族や生計を一にする子がいる
②夫と死別した後再婚しておらず、合計所得金額が500万円以下
一方、寡夫控除の対象は3つの条件をクリアしなければなりません。
控除額は、27万円です。
⓵妻と死別または離婚した後に再婚をしていない人
⓶生計を一にする子がいる
⓷合計所得金額が500万円以下
第13位 雑損控除
控除額➡(差引損失額)-(総所得金額等)×10% or (差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円!
災害、盗難、横領で資産に損害を受けた場合に受けられる控除です。
災害の範囲は、自然災害や火災、シロアリなどの害虫によるものも含まれます。
ちなみに、詐欺や恐喝による損失については、雑損控除は受けられません。
自分もしくは、生計を一にしている家族(総所得金額等が38万円以下)が所有する資産でかつ、棚卸資産・事業用固定資産・生活に通常必要でない資産に該当しないものが対象となります。
いわゆる別荘や30万円以上の骨董品・絵画などは対象外です。
雑損控除の詳しい計算方法は以下の国税庁ホームページを参照して下さい。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1110.htm
雑損控除はかなり複雑で税理士でも分かっていない方が多数いておりますw
そこで雑損控除についてまとめてみましたので、こちらの記事を参考にしてみてください👍
第14位 基礎控除
控除額➡38万円!
納税者に一律で適用される所得控除です。
(注)2020年度からは税制改正により、基礎控除が48万円になります👌
会社員必見!自分で確定申告しなければならない所得控除!
先ほどの14つの所得控除で、会社員の方が確定申告しなければならない控除は3つあります。
・医療費控除
・寄付金控除
・雑損控除
この3つ以外は会社が年末調整で全てしてくれます。
ただ、会社の経理の人もミスするかもしれません。
そこで、源泉徴収票の見方が分かれば自分の所得控除がきちんと反英されているか分かります。
源泉徴収票の見方はこちらの記事をご覧ください。
また、年末調整に反映されていない人でも、自分で確定申告すれば精算できますのでご安心ください。
元々は、全員が確定申告するべきところを、会社でできることは会社にやってもらっているだけです!
税額控除の種類!!
税額控除は19種類ありますが、主なものは以下の8種類です。
確定申告を自力でしなければならないので、税に馴染みのない人には難しいかもしれませんが、分かりやすく解説していきます。
外国税額控除・・・外国での収入があり、外国で税金を払っている際に適用できる税額控除
政党等寄附金特別控除・・・政党などに寄付をした際に適用できる税額控除
公益社団法人等寄附金特別控除・・・学校法人などに寄付をした際に適用できる税額控除
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除・・・マイホームの取得や自宅の増改築(リフォーム工事など)のためにローンを組んだ際に適用できる税額控除
住宅耐震改修特別控除・・・自宅の耐震工事を行った際に適用できる税額控除
住宅特定改修特別税額控除・・・自宅のバリアフリーや省エネのための工事を行った際に適用できる税額控除
認定住宅新築等特別税額控除・・・認定住宅で、ローンを組まなかった際に適用できる税額控除
中でも馴染みのある住宅ローン控除は詳しく記事にまとめましたので是非参考にしてみてください👍
『控除の解説』終わりに!
今回は馴染みがあって、よく使っている所得控除を中心に、所得税の基本的な流れから説明致しました。
所得控除を上手く利用して節税していただけたらなと思います。
また、個人事業主の方は勿論のこと、会社員の方でも兼業で事業をしている方や、不動産収入がある方は今すぐ青色申告して下さい。
青色申告するだけで、驚異的な節税になりますので、超おすすめです!
ただ、青色申告するには、帳簿を作成したりなど、簿記や会計の知識が必要とされますが、初心者の方であっても何の心配もいりません!
こちらの記事では青色申告の基本的な事やメリット、専門知識ゼロでも帳簿作成などができる『裏ワザ』をご紹介していますので、是非読んでみて下さい。
これからもみなさんの役に立つ税金の知識を発信していきますので、よろしくお願いします。